四寮アピール1

吉田寮自治会
熊野寮自治会
室町寮自治会
女子寮自治会

現在、京大当局学生部は、’86年3月の吉田寮「在寮期限」の評議会決定を使って、吉田寮廃寮、寮自治会消滅へ向けた動きを強めています。

「在寮期限」とは、’82年12月14日、京大における最高の決議機関である評議会で決められたものですが、寮の存廃に関わる重大な問題でありながら、その決定段階において私達寮生と何ひとつ話し合うことなく秘密裡に進め、しかも「在寮期限」が来たら、150名もの寮生を、その後の生活保障も何もなしに追い出すという不当なものです。

▷学生部は現寮生の生活を保障せよ

学寮は、経済的に困難な学生の生活を保障する厚生施設としての意義を持っています。教育を受ける権利が経済水準に関わらず、保障されるよう、特に低所得者層に対して大学の門戸を広げる為にも、学寮は存在しなければなりません。

京大在学者の出身家庭の年間所得の平均が800万円を突破し、京大生は豊かになったという様にいわれていますが、実際には低所得者層の学生が依然として多く存在し、学寮が不可欠なものであるのは明らかです。

現在における、吉田寮を廃寮に追い込もうとする、学生部の態度は、まずもって厚生施設としての寮の機能を維持する責任の放棄に他なりません。

▷新々寮とは

しかし、当局が吉田寮「在寮期限」を決定した真意は、京大四寮の新々寮化にあります。新々寮とは、寮の自治、共同性を破壊し、寮生を分断、管理することを目的に、文部省が全国的に建てようとしている寮です。具体的には①寮食堂、集会室など共同空間がなく、その為、寮生が集まって話し合うことが困難である。②全室個室で、一見プライバシーがある様だが、これは寮生の共同性を破壊し、寮生を監視する為のものである。③寮は本来厚生施設であるべきだが新々寮では寮生の経済的負担が大きくなる。④入退寮権を当局が持ち、恣意的に入退寮者の選別ができ、大学当局に選別された寮生は大学当局の言いなりにならざるをえない。という特徴をもったまるで監獄のような寮なのです。

▷自治寮としての京大四寮を守り抜き、管理強化に反対していこう

現在、京大の四寮は、いずれも自治寮で寮生自らの手によって、寮に働くすべての人々と協力して自主管理、運営しています。1人1人が自分らしく、しかも、他の寮友達と単なる同居人としてではなく、共に生活する仲間として、生き生きとした関係を模索していくためには、自分達の生活を見つめ、自分達の生活を自らの手で造り、その為に、互いに納得のいくまで話し合うことがどうしても必要であり、又、人間として当然なことです。これが自主管理なのです。無論、これは寮生の分断や外部からの監視等とは相入れないものです。

しかし、当局は、先にも述べたように、このような自主管理空間としての寮を否定しています。

このような動きは教育の管理化を狙う大学再編の一連の動きを関わるものです。

筑波大、北大、阪大に代表されるように、全国の大学の管理強化が進められています。もちろん京大においても全然無縁ではなく、移転2をにらみながら、その動きは一層強まってきています。

自治寮潰しは無論のこと、立看板、ステッカー等の学生の表現手段への規制3、教室の夜間ロックアウト、サークルBoxの再編4へ向けた動き、単位制の強化5等、学生生活のあらゆる面で管理強化は進められています。

このままでは知らず知らずのうちに管理という枠にはめられ、与えられた視点でしか物を見られなくなったり、人間として分断孤立していく中で、自分を見失い、体制に呑みこまれてしまうのではないでしょうか。そしてそのような体制に従順な学生(=将来従順な労働者)を生産することによって自らの権益をを継承し、更に一層強化していくことが支配者層の目的とする処だと私達は考えます。

以上述べてきたことから、京大四寮は吉田寮廃寮化攻撃に反対し、「在期」の実質化を阻止し、新寮を自治寮として克ち取る為、全学の皆さんへ署名、集会への協力を訴えます。

吉田寮の廃寮化を学生生活全ての面にわたる学内管理強化への危機的一歩と考え、寮の問題を寮生だけに留まらず、全学の学生1人1人の問題として捉え、学内管理強化の真のねらいは何かを共に考え、共に運動していきましょう。


  1. おそらく、1985年7月4日の「「在寮期限」粉砕!新自治寮獲得!全学集会」(主催:吉田寮自治会・熊野寮自治会・室町寮自治会)当日にまかれたと思われるビラ。京大4寮連名のビラは、確認されているかぎりでは、これが最後である。

  2. 巻末の用語一覧の関西学研都市移転」を参照のこと。

  3. 立看板やステッカーは、学生が何らかの宣伝・アピールをするために、大学構内に出したり大学の建造物に貼ったりするもの。大学によってはこれらが全面的に禁止されていたり、大学への届け出や認可申請が義務づけられていたりするところもあるが、京大では慣習的にこういった学生の表現活動が比較的自由に行われている。ただし寮自治会、学部自治会によるものなど、内容によっては「学内の美観を損ねる」「看板の支えとされている植木を傷める」等の「理由」により学生部により撤去される場合もある。

  4. 京大のサークルボックスは基本的に学生によって自主管理されている。大学によっては学生部など大学当局が部屋の鍵を管理し、時間制限の上で学生の利用を認めるところもある。その場合、たとえば2日間にわたる利用は認められないことが多い。

  5. 授業料免除、育英会奨学金など、大学の管轄する学生への経済的援助は、従来経済的事情が主要な考慮事項であったが、ここ数年、留年者には適用しないなどの締めつけが強まりつつある。