緊急声明 全ての熊野寮の寮友に訴える!

吉田寮自治会方針は“新々寮全面拒絶方針”である!1

熊野寮常任委員会ビラ「吉田寮(執)の方針は『新々寮の積極受け入れ方針』であり到底認められないのだ!」に反論する!

「在期」粉砕! 新自治寮獲得!

吉田寮自治会

9月15日、吉田寮食堂で開かれた寮生大会において、数名の熊野寮生による介入によって議事が著しく遅滞したにも拘らず、有権者数137 現出席73+委任状18 賛成59 保留28(うち委任状18、議長団3) 反対0 棄権4をもって可決された吉田寮自治会’85年度前期活動方針は2、「新々寮全面拒絶」である。

我々は、この方針の中で、新々寮3が、全室個室によって自治会の基盤たる寮生の共同性を破壊するものであること、負担区分4全面適用によって寮生に公私区分のイデオロギーを押しつけるものであること、入退寮権の剥奪によって寮生の「原論の自由」「思想信条の自由」を奪うものであること、寮食堂の廃止によって学寮の厚生的意義を失うものであることを分析している。我々吉田寮自治会は、それだからこそ、これからの新寮獲得斗争で、新々寮を全面拒絶し、新自治寮への全寮生移行を克ち取るのだ!

さて、以下、9月15日、吉田寮内に撒かれた、熊野寮自治会(常)のビラについて――これは吉田寮自治会方針の一部だけをあげつらっているものだが――逐一批判してみよう。

<Ⅰ>

① 新寮斗争について

新寮斗争は、文部省の新々寮通達のもとでの吉田寮自治会による国家イデオロギー装置たる新々寮の脱新々寮化の斗いといえる。(吉田寮自治会活動方針 p225

ここで、新寮斗争とは何かということが、余すことなく提起されている。即ち、新々寮をうけ入れ、それを内部からほりくずすことが吉田寮(執)の新寮斗争だと云っているのである。

と、熊野寮(常)は書いているが、上記の文で、我々は「新々寮の建造物を受け入れ、それから脱新々寮化しよう」と云っているのではない。文部省の新々寮通達6で大学当局がしかけてくる新々寮化の攻撃に対し、その本質を見抜き、建設以前から脱新々寮化(表現が適切でないと云うならば非新々寮化とでも云おうか)の斗いを開始しよう、と云っているのだ。我々の新寮獲得闘争は、新自治寮獲得闘争に他ならない!

また、熊野寮(常)は次に吉田寮自治会活動方針p22下段を引用し、「徹底的に検討」して、以下のように書いている。

「おしきせのソフト」は「捨てる」「使わない」と云っているが、例えば当局の寮規を、7「使わない」というふうに簡単んにならない。それらは、必ず8処分や弾圧といった権力・当局のゲバルト的強制をもって押しつけられてくるからである。

これは、処分や弾圧に屈せず、それをはねのけて斗う斗争を否定していることにならないだろうか。

また、熊野寮(常)は、(二重カッコは、吉田寮自治会の引用でない。)

「手もち9のソフトも手直しする」と逃亡を準備している。即ち、『吉田寮自治会のあり方を新々寮にあわせざるをえないかもしれない10』と。

とも書いているが、いったいぜんたい、吉田寮の執行委員会がいつ逃亡を準備したのか。このような非難は、執行委員会を選出した吉田寮自治会全体に対する非難である。「手もちのソフトも手直しする」とは、獲得される新寮が現在の旧寮とは当然違う構造であろうから、その物理的環境変化に応じて、例えば、各寮総会のかわりにブロック会議を設置するとか、定員の増加に比例して執行委員会の人数を増やすとかいうふうに、自治の内実をより深めてゆく方向で「ソフトの手直し」をするのであって、あらゆる差別・抑圧を許さぬ現吉田寮自治会方針をくつがえすものにしようとか、自治のあり方を新々寮イデオロギーに染めてゆこうとかいうものでは決してない。

また、熊野寮(常)は、

(略)吉田寮(執)の最後の逃げ口上が(中略)現実がどれ程悲惨であっても心の中に「新々寮批判」の気持ちをもって生きていこうというおめでたさなのだ。

とも書いているが、これは全くの誤解である。吉田寮自治会活動方針で再三述べているのは、自治の基盤が、寮生の相互的交感と、不断の討論である、ということである。文部省の建てようとする新々寮がこの自治の基盤を崩壊させるものであることを、我々は見抜き、まず構造の問題で新々寮を骨抜きにし、次にソフトウェアの上でもこの自治の基盤を不断に拡大してゆく。構造上で非新々寮化しても、心の中に「新々寮批判」をもっていれば、例えば、全寮で会議をしても在寮者の二割ほどしか出席しないような状態でもよい、などとは云ってない11。我々吉田寮自治会は、各寮総会や寮生大会において原則として全寮生の参加を義務とし、その場の活発なる論理的討論によって自治が堅持されている、と考えている。

また、熊野寮(常)は、

<Ⅱ>

「寮の教育的意義」とは完全に権力者側から12、「寮自治をさせてやる」という考え方ではないか!

とも、書いている。実際に権力者が「寮自治をさせてやる」と思っているかどうか我々は知る由もないが、我々が「意義」と云うのは、自治寮における自主管理・社会的批判の視座を育てる、という意味において寮自治は各寮生にとって「意義」がある、と云っているのであって、上からの押しつけとしての「教育」を云っているのではない、ということは吉田寮自治会’85年度前期活動方針に書いてある。

また、我々が、北大の例を引用したのは、建造物が新々寮化してもなお自治寮として成りたっている例があるのだから、ましてや今から脱新々寮化(表現が適切でないと云うならば非新々寮化とでも云おうか)の斗いを広範にくり拡げれば、どうして4条件13全面撤廃の新自治寮が克ち取れない筈があろうか、と云いたかったのである。もちろん、北大恵迪寮の差として、入退寮権の自治会保持は、まずもって吉田寮自治会の新寮獲得斗争の大きな争点とせねばなるまい。我々、吉田寮自治会は、入退寮権を断乎として防衛する。また、新々寮4条件については、確かに我々吉田寮自治会は、大学当局に負担区分を支払わされている(全使用料の47%の水光熱費)が、再交渉を含めて4条件全面撤廃を追求する。

また、熊野寮(常)は、吉田寮の方針について、

「これまで吉田寮が斗ってきた全歴史を全て投げ捨てることの宣言」
「『当局や権力には勝てないから新々寮でもいい14
「新々寮しか今は建つ筈がないから、これを積極的に受け入れよう」
「負担区分を認めたのだから他の新々寮条件も受け入れよう」
「『寮問題は全学の問題ではない』と主張15

と云っているが、我々吉田寮自治会’85年度前期活動方針のどこを読めば、そんなことが書いてあるのか、具体的に指摘してほしい。書いてもいない方針について非難されても、残念ながら反論する術がない。

また、熊野寮(常)は、

負担区分受け入れのときの16問題は、はっきり云って、2寮間の意思疎通の問題でしかない。

とも書いているが、’83年11月から再三負担区分斗争が四寮全体の問題であることを確認し、四寮合同で寮小委と負担区分交渉を開始したにも拘らず、熊野寮(常)は、’84.1.12、他の3寮に対して一切の連絡なく1月分の負担区分を当局の請求する額で支払い、その後、1.13の4寮会議の際にも、1.14の第4回負担区分交渉の際にも、負担区分支払いの報告を一切せず、結局1.22の4寮会議の際に吉田寮自治会執行委員会が事実経過を追及するに到って初めて、負担区分支払いの事実を認めた、というのが事実であってこれがどうして「2寮間の意思疎通の問題」として片付けられるのか。熊野寮(常)が、かつての熊野寮(常)のこのような行為を、批判的に検証することなく、吉田寮自治会に、「裏切り」と悪バを投げつけるのは不誠実ではなかろうか。

重ねて言うが、吉田寮自治会の’85年度前期活動方針は、〈新々寮全面拒絶方針〉である!

さて、我々吉田寮自治会は、今後、相互の討論を実りあるものとするために以下の、基本的なことがらを、熊野寮(常)にお願いしたい。

Aというものを批判するのに、恣意的に決めつけたA’(Aとは似ているようにみえるが、真のAでなく、Aもどき、非而似ママA)をもち出し、このA’を批判することでAそのものを批判したつもりになるのはやめてもらいたい。例えば「新々寮の脱新々寮化の斗い」=Aに対して「新々寮の積極うけいれ」=A’をもちだし、A’を批判してAを批判したつもりになっても、Aを含む吉田寮自治会’85年度前期活動方針を批判したことにはならない。今後、我々の方針を批判するのであれば、我々の方針を熟読し、ありのままに解釈し、充分な分析と検討のもとに、正面から批判してほしい。そうすれば実りある討論もなりたつだろう。

すべての熊野寮生諸君!
君たちの選出した常任委員会のビラに対する、我々吉田寮自治会の反論は以上のとおりである。すべての熊野寮生諸君の、誠意ある対応を望む。

1985年9月17日


  1. 1985年9月15日、改めて開かれた吉田寮寮生大会当日に吉田寮内にまかれた熊野寮自治会常任委員会のビラ「吉田寮(執)の方針は「新々寮の積極受け入れ方針」であり到底認められないのだ!」(本資料集に収録)に対し、同日の寮生大会での方針採択を受けて出された反論ビラ。ビラの題名のところには「850916」とあるが、末尾には1985年9月17日と日付が打たれている。また、ビラの2枚目の裏には「我々は自治の破壊を認めない」(1985年9月17日、吉田寮自治会、本資料集に収録)が印刷されている。これに対し熊野寮自治会常任委員会は、再反論ビラ「《吉田寮(執)に再度問う!》/「在期」を粉砕せずに、対当局圧力運動で、新自治寮が戦取できるのか!?」(1985年9月、本資料集に収録)を出した。

  2. 「1985年度前期吉田寮自治会全体方針(案)」(1985年9月13日、吉田寮自治会執行委員会)として本資料集に収録。

  3. 巻末の用語一覧を参照のこと。

  4. 巻末の用語一覧を参照のこと。

  5. 「4章 我々を支配するものは何か」。なお、ここでの引用は、方針からの直接の引用ではなく、熊野寮自治会常任委員会のビラでの引用から孫引いて引用したものである。ただし、「吉田寮自治会活動方針」はビラでは「方針案」となっていた。

  6. おそらく関係国立学校長宛文部省管理局長・文部省大学局長通達「国立学校学生寄宿舎の維持管理について」(文管計第248号 昭和50年9月4日)のことと思われるが、その上で、これには新々寮に関する言及は存在しない。

  7. 該当文献には「、」はない。

  8. 該当文献には「必ず」とある。

  9. 該当文献には「手持ちの」とある。

  10. 該当文献には「知れない」とある。

  11. テクストによっては、この後に「(熊野寮の実態)」と付け加えられている。

  12. 該当文献には「「寮の教育的意義」とは完全に権力者側から」にアンダーラインが引かれている。また、「から」の後には「、」は確認されない。

  13. 新々寮4条件のこと。巻末の用語一覧を参照のこと。

  14. 該当文献には「いい」の後に「』」がある。

  15. この引用の中の二重鉤括弧は、該当文献では普通の鉤括弧である。

  16. 該当文献には「時の」とある。